おふたりはどんな学生時代を過ごしましたか?
- 當銘氏
- 学校では私はゲームグラフィック&キャラクター専攻でした。もともとゲームをしたり、絵を描いたりすることが好きでしたから、いつかはゲームクリエーターになりたいと、学生時代はわりと一生懸命に勉強していました。朝から晩まで学校にいて、授業が終わっても残って先生に教えてもらったり、調べ物をしたりして過ごしていましたね。学生時代に制作したポートフォリオは、背景を2D、3D両方にし、キャラクターのいろいろな動きをいれたもの。カプコンの入社試験には作品を提出する必要がありますので、私はこれを提出して、内定をいただけました。
- 藤木氏
- 私はCGクリエーター専攻卒業です。学生時代はゲームよりも映画制作に興味があり、自分なりに作品をつくり貯めていました。学校の制作展で作品を発表した際に、それを見てくださったカプコンの方に「君はエフェクトもできるのでは?」と声をかけていただき、「ゲーム業界もいいかも!」と今の仕事につながっています。
これまでどんな仕事をされてきましたか?
- 藤木氏
- 「バイオハザード ヴィレッジ」では、キャラクターが死ぬ際のエフェクト(演出)を担当しました。「バイオハザードRE:4」ではステージに配置されている壊れ物や、物を動かした際に発生する煙、背景にあるプロップスと呼ばれる花瓶といった小道具のエフェクトを主にやらせてもらい、現在は開発中のゲームのエネミーのエフェクトを担当しています。具体的には敵を攻撃した時に出る血や鎧にモノがあたった時に出る火花などをつくっています。現在は入社7年目で、エフェクトを任せてもらえるようになったのは3年目から。それまでは新しく出る次世代ゲーム機でどこまでの画をつくれるか検証をする仕事をしていました。
- 當銘氏
- 私はキャラクターや背景物の物理クロスシミュレーションを担当しています。具体的なゲーム名だと「ストリートファイター6」をやらせてもらいました。人やモノが物理的に正しい動きになっているか、常に意識しリアルな動きをつくる仕事です。例えばキャラクターが動く時、衣服の布がその動きにともなって揺れているか。背景にある木箱が壊れたり、岩が落ちてきたりする際に、その重さや質感を表現できているか、などを意識してエフェクトをつくっています。私は入社4年目で、入社時からこの業務を担当しています。

お仕事のやりがいはどんなところにあると感じていますか?
- 藤木氏
- エフェクトはいろんな素材を組み合わせてつくるものなのですが、イメージした通りのものをバシッとつくることができた時に、喜びを感じます。そこまで完璧なものができる確率は、僕はまだ7割程度ですが、ここからもっと自分の精度を上げていきたいですね。あとは完成したゲームのクレジットに自分の名前が載っているのを見た瞬間は、達成感があります。
- 當銘氏
- そうですね。私も理想のエフェクトをつくるために日々試行錯誤しています。リアルな動きとゲーム的な動きをミックスしなければなりませんから、普段からモノはどうやって動くのか、服はどう揺れるのか常に観察していますよ。自分の納得のいくものができたと思えるのは、5、6回つくり直した後くらい。壺の破壊がとても難しくて、ひたすら1ヵ月間、壺を壊し続けていたこともありました。
ゲーム、CG業界は今さまざまな技術が生まれ、転換期ともいえますが、今後この業界で必須になるスキルとはどんなものだとお考えですか?
- 藤木氏
- ものを見る力はどの時代も必要です。作品を見た時になにが良くてなにが悪いのか、判断できる基準を自分なりに持っておくといいと思います。学生時代にそういう自分なりのものさしを持っていると社会に出ても、いいものをつくるための勉強を続けることができるのではないでしょうか。
- 當銘氏
- そうですね。ソフトやツール、そしてその機能は年々増えていきます。表現の幅はきっと広がっていくと思いますが、それ以前に自分がなにを面白いと思うのか、どういうものをつくりたいのか、理解していることが大事だと僕は思います。
- 藤木氏
- もちろん基本的に新しい技術が出るたびに使ってみることも僕らはしています。実際に使ってみて、「前のバージョンの方が自分は早くできるな」と思うなら、自分なりに判断していい。でもまずは触ってみることは前提ですね。
- 當銘氏
- 私は学生の頃から、新しい情報をチェックすることは欠かしませんでした。学校の図書館にあるCG関連の月刊雑誌を読み漁って、SNSとも併用してインプットしてきましたね。

就職して感じたカプコンの良さ、そして大変だと思った瞬間も教えてください。
- 藤木氏
- 良かった点はやはり、すごい技術をもった人、ものすごいものをつくれる人がたくさんいることですね。だからこそモチベーションも上がりますし、新たな気づきもあります。大変なことは、常にゲームのこと、制作のことを考えてしまうことです。周りの人のようにいいものをつくりたいと思えば思うほど、休みの日にゲームをやっていても、仕事目線で見てしまいますし、映画を見ていてもエフェクト部分に注目してしまい、純粋に楽しめなくなってしまいました(笑)。けれどそこまでのめり込める仕事に就けているというのはうれしいことですね。
- 當銘氏
- 私もまったく同じです。プライベートで楽しむゲームもアニメも映画も、「これは画的に問題ないだろうか」とチェックする癖がついてしまいました。カプコンならではの良いところといえば、やはりファンが多くいるタイトルをつくっていますから、リリースされた時にその感想が届くことがうれしい。自分のつくった細かいエフェクトまで見ていてくれるファンもいて、仕事の醍醐味を感じる瞬間です。
ゲーム業界を目指す高校生に向けてメッセージをお願いします。
- 藤木氏
- もうすでになにかをつくっているなら、SNSなどで自分から発信することが大事だと思います。技術のある人たちはどんどんそうやって発信しているので、それを見て勉強し、自分のレベルを知ること。下手でもいいから発信することで仲間を増やして、知識も吸収できます。同時にどういうものが評価されているのかSNSを使って知っていくのがいいと思いますよ。
- 當銘氏
- デッサンやクロッキーなどの基本的な練習をした方がいいとよく言われると思います。もちろんそれらも大事なことですが、同時に自分がどんなものが好きか、知っておくことが重要になってくると思います。好きなものがわかればその魅力を掘り下げられるし、つくりたいものも見えてくる。好きなものがある人のポートフォリオは、やっぱり魅力的ですよ。技術だけに集中せず、面白さを追求できているからでしょうね。僕自身もテクニックにこだわりすぎて自分のつくるものに面白みがないと悩んでいた時期があったので。ぜひそれはお伝えしたかったです。