自分で動く、リアルに感じる。その体験が、人とは違う自分の価値になっていく。
世界各地へ活動の場を広げていますが、どのようなお考えからですか?
- せきぐち氏
- コロナで渡航制限がかかっている間、海外の仕事が全部止まってしまったので、それを戻すのに待っているだけではダメだと思ったのです。いろいろなところへ出向くことを過度にやると決めて、あちこち飛び回っています。知らない人にもリアルでどんどん会ってみる、興味をそそる施設があれば飛び込んで話を聞いてみる。情報はネットで調べればいくらでも得られるのですが、それは誰でも手に入れられる情報ですよね。実際に自分で動いて体感しなければ出会えないものはまだたくさんありますし、それをどれだけ持っているかが人とは違う自分だけの価値になっていくのだと思います。
デジタルアートの世界は、今後どのように変化していくのでしょう?
- せきぐち氏
- それは誰にもわかりません。だからこそ、人に言われたことよりも、自分が感じたことを信じて動くことが重要です。次の時代はこうなるから今のうちにこれを勉強しろとか、これをやっておけば将来の仕事に役立つとか、それも必要なことですが、もっと純粋に自分が好きなことを体験してみる、惹かれるものがあれば直接見に行ってみる。そこに、生身の人間だから感じとれるものがあるはずです。AIなどの進化が目覚ましい中で、人間として何をすべきか、人間だから何ができるかは、今後のデジタルアーティストはみんなどこかで意識していなければならないでしょう。
技術面での激しい変化に、これからの学生たちはどのように備えていけばいいのでしょう?
- せきぐち氏
- 学校でも教科書に書いてあることがどんどん古くなっていったりすると思いますが、その点で、このTECH.C.は有利だと言えます。「これは古いから変えていこう」ということができる環境ですから。機器や設備もすぐに新しいものを取り入れていく姿勢がありますので、使えるものは何でも使って、日々情報をキャッチアップしながら、自分が可能性を感じるものを学んでいくことですね。
- 学生
- せきぐちさんは、当時まだ未知の世界であったデジタルアートに挑戦する時に、怖さを感じませんでしたか?
- せきぐち氏
- 怖さはなかったですね。初めてVRアートを体験した時は、「何これ?楽しい!」しかありませんでした。その時はまだVRアーティストという仕事はありませんでしたが、こんなに誰かを楽しませられるものは、いつか必ず仕事になると確信しました。気がつけば何時間も夢中になっていて、楽しくてずっと続けられるというのは、何よりの才能かも知れませんね。
- 学生
- 今よりもっと技術が進歩した時に、挑戦してみたいことはありますか?
- せきぐち氏
- 何千人も同じ空間に入って、リアルタイムで体験を共有してみたいですね。リアルとバーチャルの両方の良さを取り入れて、生身の人間同士が同じものを同時に楽しめるものにしたいです。
- 学生
- 今後NFTをより広めていくにはどのようなことが効果的だと思いますか?
- せきぐち氏
- ご自分でもNFTをやってるんですか?
- 学生
- コミュニティに入って、イベントに参加したり、クリエイターの方たちと話したり、個人的には楽しいのですが、やっている人が周りにいなくて。
- せきぐち氏
- 周りにいないのに、自分で現場に行ってみようという気持ちが素晴らしいと思います。私はこれから投機目的でNFTに群がる人たちは減っていって、純粋にアートをつくりたい人とそれを応援したい人たちの世界になっていくのだと思います。広め方の答えはなくて、つくりたいものを純粋につくって出していくだけですね。いいなと思うアーティストがいれば、その人を参考にしてみるのもいいかも知れません。
- 学生
- VR機器は多くの人に身近なものになりましたが、どのような体験をしてもらいたいですか?
- せきぐち氏
- ご高齢の方や発達障害の子たちに楽しんでもらえた時は、すごく嬉しい気持ちになります。私も初めて体験した時に、理屈抜きで「楽しい!」と思いましたし、リミッターのようなものが解除された感覚がありました。それと同じように、いろいろな人にとって何か新しい可能性があると思いますので、一人でも多くの人に広がってほしいですね。
これからデジタルアートの世界を目指す学生たちへメッセージをお願いします。
- せきぐち氏
- デジタルアートは本当に移り変わりが激しく、大きく揺れ動く世界になってきています。だからこそ、何か一つに偏るのではなく、バランス感覚を持って行ったり来たりすることが大切です。リアルとバーチャル、ネット情報と実体験、世界の何万人と目の前の一人。わからなすぎる時代だから、いろいろ視点を切り替えながら自分でつくり出していく。一緒にそういう世界にしていきましょう。